会社名・商品名の決め方:失敗しない7つの手順
良い名前には3つの条件があります。言える(狙う市場の人が迷わず発音できる)、覚えられる(一度聞けば思い出せる)、使える(商標やドメインで困らず、よくない意味を持たない)。この3つを順番に確かめていけば、好みだけで選ぶより失敗がぐっと減ります。
手順1 名づける対象を要素に分解する
いきなり名前を考えるのではなく、名づける対象を言葉にします。「一言で言うと何か」「誰のためか」「何をするか」「使うと何が良くなるか」「どんな気持ちにさせたいか」「大切にしている価値観」「避けたいイメージ」の7つに分けて書き出すと、名前の素材になる要素が見えてきます。
名づけラボの発想タブに書き込むと、文章から要素を見つけて「要素マップ」にまとめます。
手順2 本質を一語にする(つまり何?)
要素ごとに「つまり何?」と問いを重ねると、より本質的な価値にたどり着きます。たとえば家計簿アプリなら「記録 → 記憶・思い出」「節約 → お金 → 豊かさ」「導く → 安心・安全」のように、複数の要素が同じ本質(ここでは「安心」)に行き着くことがよくあります。多くの要素が集まる本質は、名前の中心に置く候補です。
手順3 命名の型を選ぶ
名前の作り方にはいくつかの型があります。型を先に決めると、発想が散らばりません。
| 型 | 作り方 | 長所 | 短所 | 例 |
|---|---|---|---|---|
| 記述型 | 機能や業種をそのまま表す | 説明がいらない | 独自性が弱く、商標登録が難しい | General Motors、東京電力 |
| 示唆型 | 便益をほのめかす語を組み合わせる | 覚えやすく、意味が伝わる | 同業と語が重なりやすい | Pinterest(pin + interest)、Netflix(net + flicks=映画の俗語) |
| 比喩型 | 別の物・現象にたとえる | イメージが強く、物語を語れる | 比喩の説明が必要なことがある | Amazon(世界最大級の川 → 品ぞろえの大きさ)、Jaguar |
| 語根型 | ラテン語・ギリシャ語などの語根を使う | 響きが国際的で、由来を語れる | 発音が難しくなりがち | Sony(ラテン語 sonus=音)、Mercari(ラテン語 mercari=商う)、Volvo(ラテン語「私は転がる」) |
| 造語型 | 意味を持たない音から作る | 独自性が最も高く、商標を取りやすい | 意味を後から育てる必要がある | Kodak(創業者が好んだ K で始まり K で終わる造語) |
| 組み合わせ型 | 2つの語を縮めてつなぐ(かばん語) | 意味を保ちつつ新しさが出る | 不自然なつなぎ目に注意 | Microsoft(microcomputer + software)、Instagram(instant camera + telegram) |
| 人名・地名型 | 創業者や土地の名前を使う | 物語と信頼感がある | 海外で読みにくい場合がある | Honda、Adidas(Adi Dassler) |
| 頭字語型 | 言葉の頭文字を並べる | 短い | 意味が伝わらず、覚えにくい | ASICS(Anima Sana In Corpore Sano)、IKEA |
| 擬音・擬態語型 | 音や様子を表す言葉を使う | 感覚的で親しみやすい | 幼い印象になることがある | Twitter(さえずり)、ポッキー(ポッキンという音) |
| 反復型 | 音を繰り返す(頭韻・脚韻・畳語) | 記憶に残りやすい | 軽い印象になりやすい | Coca-Cola、Kit Kat |
手順4 候補を20〜50個出す
本質や要素から、たとえ(動物・自然・道具)、擬音語・擬態語、外国語の語根(ラテン語・ギリシャ語など)を集め、縮める・つなげる・重ねるといった操作で候補を増やします。最初から1つに絞らず、数を出してから比べるのがコツです。名づけラボの素材箱に素材を入れると、組み合わせた候補を採点の高い順に並べます。業種ごとの注意点は業種別の名づけ方にまとめました。
手順5 狙う市場の言語で発音を確かめる
その言語にない音(例: 中国語・韓国語の v、日本語の l と r の区別)や、子音の連続・語末の子音は、発音が崩れる原因になります。英語では問題ない Zentrix も、中国語で音訳すると約5文字(曾特里克斯)になり、日本語では「ゼントリックス」と7モーラに伸びます。詳しくは海外でも通じる名前の条件をご覧ください。
手順6 覚えやすさを確かめる
短さ(2〜3音節)、音の繰り返し、業界でありふれていない要素、絵が浮かぶ具体性は、研究で記憶への効果が確かめられている条件です。反対に、-tech・-ify・smart- のような定番の語要素は、他社の名前と記憶の中で混ざります。たとえば SmartTechify(71点)を名づけラボで推敲すると、次のような案が出ます。
- Techify(84点・+13)— 定番の語要素「smart」を外す
- Smarfy(82点・+11)— 真ん中の音節を削って短くする
- Marttechify(80点・+9)— 子音の連続「sm」から「s」を取る
条件の根拠は覚えやすい名前の条件で解説しています。
手順7 商標・ドメイン・意味を確認して決める
最終候補は、特許庁の無料データベース J-PlatPat などで同じ・似た商標がないかを調べ、使う分野の区分も確かめます。ドメインの空き、SNSのアカウント名、現地の話者から見た意味の確認もこの段階で行います。手順は商標の簡易チェックのやり方に、候補の絞り方は最終候補の絞り方にまとめました。
名前が決まったら、表記(大文字・小文字など)を1つにそろえ、ロゴを作ります。ロゴの形や色も、名前の音のイメージ(柔らかい・鋭いなど)とそろえると印象が一貫します。
よくある失敗
- 定番の語要素に頼る: -tech・-ify・smart-・global などは、同業の名前に埋もれます。
- 綴りから読めない: 読み方が割れる名前は、口コミのたびに発音が揺れ、検索でも見つけにくくなります。
- 海外で意図しない意味になる: 他の言語で卑語や不吉な語に聞こえないか、最終候補は必ず確認します。
- 長すぎる: 4音節を超えると、一度聞いただけで言い返すのが難しくなります。
- 競合と似ている: 子音の並び(例: G-G-L)が同じだけでも似て聞こえ、商標でも不利です。
よくある質問
画数による「社名占い」との違いは?
名づけラボは画数や運勢ではなく、言語学・心理学・マーケティングの研究で確かめられている条件(発音のしやすさ、記憶への効果)で採点します。研究段階の仮説は別のカテゴリーに分け、確立した知見と混ぜないようにしています。
何音節くらいが良いですか?
短期記憶の研究から、2〜3音節がもっとも扱いやすい長さです。日本語のカタカナでは4モーラ前後(例: ポケモン)が収まりの良い型として知られています。
英語の名前と日本語の名前、どちらが良いですか?
主な市場によります。日本語の名前は国内で覚えやすい一方、ローマ字にすると長音・促音の区別が消えたり(Ryoma / Ryouma)、英語式に読まれたり(Kanade →「カネイド」)します。名づけラボでは両方の読み方で点検できます。
会社名(商号)を登記すれば、商標登録はいりませんか?
商号の登記と商標登録は別の制度です。商号は同じ所在地で同じ商号でなければ登記できますが、商品やサービスの名前として独占的に使う権利は、商標登録によって得られます。事業で使う名前は、商標の確認もしておくと安心です。